Windows 95やWindows XPの頃に、Windowsを使いやすくカスタマイズできるMicrosoft製ツールとして、パワーユーザーの間で人気のあった「PowerToys」は、現在Windows 10や11向けにオープンソースとして開発が進められており、「こんな機能が手軽に使えたらなぁ」と感じられる便利な機能が多く搭載されています。
そこでここでは、PowerToysの入手方法や、現在のバージョンで利用できる機能の概要を紹介します。
なお、機能紹介の画像の一部が英語のままになっていたり、古いバージョンの画像の場合がありますのでご容赦ください。
目次
動作環境
この記事は、以下の環境で実行した結果を基にしています。他のエディションやバージョンでは、動作結果が異なる場合があることをご了承ください。
ソフトウェア | バージョン |
---|---|
Windows 10 Pro 64bit | 21H2 |
PowerToys | 0.68.0 |
PowerToysのインストール
PowerToysは、以下のGitHubのページからインストーラーを入手してインストールする方法と、Microsoft Storeからインストールする方法がありますが、Microsoft Storeからのインストールが分かりやすいでしょう。
Releases · microsoft/PowerToys · GitHub
インストールが完了すると自動的にPowerToysが起動し、タストレイにアイコンが表示されます。
タスクトレイのアイコンをクリックすると、設定画面が表示され、各機能のオン/オフの切り替えなどの設定を行うことができます。
一部の機能は、マシンを再起動しないと動作しないことがあるようなので、正常に動作しないなぁと思ったら、PowerToysをインストール後Windowsを再起動してみましょう。
以降では、現在のバージョンで提供されている各機能を紹介します。
常に手前に表示
「常に手前に表示」は、任意のアプリケーションウィンドウを常に手前に表示させて、他のウィンドウを選択したいときに隠れてしまわないようにする機能です。
「常に手前に表示」機能を利用するときは、特定のウィンドウを常に手前に表示させた状態で「Windows+Ctrl+T」キーを押します。
すると、サウンドとともにウィンドウの周りに青い枠が付き、そのウィンドウが常に手前に表示されるようになります。
また、同じ操作を繰り返すことで、複数のウィンドウを常に手前に表示することもできます。
なお、ウィンドウが常に手前に表示される状態を解除するには、対象のウィンドウをアクティブにしてから、再度「Windows+Ctrl+T」キーを押します。
アプリによっては、自身のウィンドウを常に手前に表示させる機能を搭載していることもありますが、PowerToysの「常に手前に表示」機能を利用すれば、任意のウィンドウに対して設定できるのが便利です。
Awake
「Awake」は、Windowsの電源設定を変更することなく、PCを起動したままにできる機能です。
「Awake」機能は、タスクトレイにアイコンとして表示されており、右クリックメニューから、指定した時間だけ起動したままにしたり、モニターだけをオンにしたままにできます。
Color Picker
「Color Picker」は、マウスポインターの場所のカラーコードを表示してくれる機能です。
「Color Picker」機能を利用するときは「Windows+Shift+C」キーを押すことで、マウスポインターの横にHTMLカラーコード、およびRGBカラーコードが表示され、そのままマウスをクリックすれば、カラーコードをクリップボードにコピーすることもできます。
気に入った色のコードを知りたいときに便利です。
FancyZones
「FancyZones」は、ウィンドウをデスクトップ上に並べるウィンドウ整列機能です。
Windows 10や11の標準機能されているスナップレイアウトでは、分割時のレイアウトが限定されますが、FancyZonesを利用することで、さまざまなウィンドウ配置が可能になります。
配置方法は、あらかじめ用意されている「テンプレート」から選択したり、「カスタムレイアウト」で自分で配置を定義したりできます。
テンプレートでは、次のような配置が用意されています。
- Focus
- Columns
- Rows
- Grid
- Priority Grid
FancyZonesを利用してウィンドウを配置するときは、「Shift」キーを押しならがら、ウィンドウをドラッグします。
たとえば、配置方法としてテンプレートから「Grid」を設定している状態だと、次のように配置できます。
たくさんのウィンドウを行き来して作業をするときに、ウィンドウを思い通りに配置できて便利です。
File Locksmith
「File Locksmith」は、別のプログラムがフォルダーやファイルを開いている(ロックしている)ために、フォルダーやファイルを削除するといったファイル操作ができないときに、そのフォルダーやファイルをロックしているプロセスを調べるツールです。
File Locksmithの使い方は、対象となるフォルダーやファイルを右クリックして、メニューから「このファイルは何で使用していますか?」を選択します。
すると、フォルダーやファイルをロックしているプロセスが一覧表示され、ロックしているプロセスを終了させることができます。
また、プロセス一覧画面右上の「盾」アイコンをクリックすれば、管理者権限で動作しているプロセスも表示させることができます。
File Explorer add-ons
「File Explorer add-ons」は、エクスプローラーのファイルプレビュー機能やファイルのサムネイル表示を拡張してくれる機能です。
ファイルのプレビュー
ファイルのプレビュー機能では、次のファイルがプレビュー表示できるようになります。
- Markdown記法で書かれたテキストファイル(拡張子がmdのテキストファイル)のHTML形式でのプレビュー
- SVG形式の画像ファイル
- PDF形式ファイル
- 開発者ファイル(.cpp, .pyなど)
- Gコードファイル(.gcode)
ファイルのサムネイル表示
ファイルのサムネイル表示では、次のファイルがサムネイル表示できるようになります。
- SVG形式の画像ファイル
- PDF形式ファイル
- Gコードファイル(.gcode)
- STLファイル(.stl)

SVG形式ファイルのサムネイル表示
ホストファイルエディター
「hosts」ファイルを編集する場合、通常はメモ帳を管理者権限で起動してから「C:\Windows\System32\drivers\etc\hosts」を開くといった面倒な操作が必要になりますが「ホストファイルエディター」を利用すれば、簡単にhostsファイルを編集できるようになります。
ホストファイルエディター画面は以下のとおりで、新しいエントリの追加や既存エントリの削除、各エントリの有効/無効の切り替え、メモ帳でhostsフィルを開くといった操作ができます。
Image Resizer
「Image Resizer」は、画像ファイルのサイズを一括変更できる機能です。
「Image Resizer」機能を利用するときは、サイズ変更したい画像ファイルを選択した状態で、右クリックメニューから「Resize pictures」をクリックします。
すると、サイズ変更画面が表示されるので、画像サイズを指定して「Resize」をクリックするだけです。
画像サイズは、デフォルトのサイズ(小、中、大)以外にも、ピクセル、パーセンテージ、センチメートル、インチを使用してカスタムサイズを指定することもできます。
また、左下の「Setting」画面からは、デフォルトのサイズを変更したり、画像形式ごとの圧縮率の調整、出力ファイルの命名規則のカスタマイズが可能です。



たくさんの画像ファイルのサイズを一括変更したいときに便利です。
Keyboard Manager
「Keyboard Manager」には、2つの機能が搭載されており、「Remap Key」ではキーボード配列を変更することができ、「Remap shortcuts」では「Ctrl+C」キーのようなキーを同時押しするキーボードショートカットを、別のキーボードショートカットに変更することができ、いずれの変更も再起動不要で適用できます。
マウスユーティリティ
「マウスユーティリティ」は、マウスポインターの位置やクリック操作をわかりやすく表示してくれる機能です。
たとえば「Ctrl」キーを2回押せば、マウスポインターの周辺だけを明るく表示(スポットライト表示、ハイライト表示)させることができます。

「Windows+Shift+H」キーを押せば、マウスをクリックしたり、右クリックしたときにマウスポインター周辺を強調表示できます。
「Ctrl+Alt+P」キーを押せば、マウスポインターを中心とした十字線が表示され、マウスポインターの動きに十字線が追従して表示されます。
「Windows+Shift+D」キーを押せば、マウスポインターの位置にデスクトップ全体が縮小表示され、クリックした位置へ素早くマウスポインターを移動させることができます。
なお、この「マウス ジャンプ」機能はデフォルトでは無効化されているので、利用したいときは「マウス ユーティリティ」の設定画面で有効化する必要があります。
マウスユーティリティの機能はいずれも、高解像度のディスプレイ環境で便利な機能です。
プレーンテキストとして貼り付け
Webページのテキストなど、書式が付いたテキストをコピー&ペーストしたときに、テキストだけ貼り付けたいのに太字やアンダーラインなどの書式も一緒に貼り付けられてしまうことがあり、そのようなときに便利なのが「プレーンテキストとして貼り付け」機能です。
Wordなどのアプリによっては、テキストだけを貼り付けるショートカットキー「Ctrl+Shift+V」キーが用意されている場合もありますが、そうでないケースでも「プレーンテキストとして貼り付け」機能を利用すれば「Windows+Ctrl+V」キーを押すことで、書式なしのプレーンテキストとして貼り付けできるようになります。
なお、貼り付け時に使用するショートカットキーはカスタマイズできます。
PowerRename
Windowsの標準機能で複数ファイルの名前を一括で変更したい場合、エクスプローラーなどGUI操作からでは、通常はカッコつきの番号を振るぐらいしかできませんが「PowerRename」を利用すれば、番号を振るだけでなく、拡張子だけ変更する、ファイル名だけ変更する、フォルダー名だけ変更する、正規表現を利用して変更するなど、より複雑な一括変更が可能です。
基本的な使い方は、一括変更したいファイルを選択した状態で、右クリックメニューから「PowerRename」をクリックします。
すると、変更画面が表示されるので「Search for:」欄に変更したい文字列を、「Replace with:」に変更後の文字列を指定します。
すると、変更後のファイル名が「Preview」欄の「Renamed」列に表示されるので、確認後「Rename」をクリックすることで一括変更が可能です。
なお、一括変更後に「Ctrl+Z」で変更を取り消すこともできます。
使ってみた感じだと、サードパーティーのファイル名一括変更ツールに比べると物足りなさを感じることもありますが、右クリックメニューから手軽に変更できる便利さはあります。
PowerToys Run
「PowerToys Run」は、コマンドタイプのランチャー機能で、アプリやフォルダー、ファイルをキーワードで検索して開くことができます。
ランチャーは「Alt+スペースキー」を押すと表示され、アプリやフォルダー、ファイルの名前などのキーワードを入力すると候補が表示されます。
キーワードは完全に入力しなくても、一部だけ入力すれば候補が表示されます。
たとえば「メモ」と入力すると、検索ボックスの下に候補が表示されるので、上下の矢印キーで候補を選択した状態でEnterキーを押すことでアプリを起動したり、フォルダーやファイルを開いたりできます。
また、候補に表示されるアプリは、右側に表示されているアイコンから、アプリを管理者権限で起動したり、アプリが保存されているフォルダーを開いたり、アプリが保存されているフォルダーをカレントディレクトリとしてコマンドプロンプトを起動したりできます。
さらに、数式を入力して計算し、その結果をクリップボードへコピーするといったこともできます。
Quick Accent
「Quick Accent」は「à」といったアクセント記号付き文字の入力を補助するツールですが、日本語入力とは相性がよくないようなので、デフォルトでは無効化されており、利用する機会もほとんどないと思われるため、割愛します。
スクリーンルーラー
「スクリーン ルーラー」は、デスクトップ上でさまざまな領域の幅や高さを計測できる定規機能です。
「スクリーン ルーラー」機能を利用するときは「Windows+Shift+M」キーを押すことで、デスクトップ上部にツールバーが表示され、4種類のツールから選択して計測を行います。
- Bounds:選択領域の高さと幅を計測します。
- Spacing:検出された領域の高さと幅を計測します。
- Horizontal spacing:検出された領域の高さ(垂直方向)を計測します。
- Vertical spacing:検出された領域の幅(水平方向)を計測します。
なお「Bounds」以外のツールは、色の変化からマウスポインターのある領域の端を検出しているようです。
Shortcut Guide
「Shortcut Guide」では、Windows 10や11で利用できる「Windows」キーを併用するショートカットを一覧表示してくれます。
ショートカットの一覧は、デスクトップにオーバーレイ表示され、表示させた一覧から該当のキーを押せばそのまま実行できます。
Text Extractor
「Text Extractor」は、デスクトップ上に表示している画像などからテキストを抽出してくれるOCR機能です。
Text Extractor機能を利用するときは「Windows+Shift+T」キーを押すことで、デスクトップが暗転して、マウスでテキストの範囲を選択すると、認識されたテキストがクリップボードにコピーされます。
日本語を読み取った場合、上の画像のように文字間に余計なスペースが入っていましたが、バージョンアップで解消しています。
なお、読み取り可能言語は、日本語環境のWindowsでは自動的に「日本語」に設定されますが、後から読み取り可能な言語を追加することができます。
PowerToysWindows 用の Text Extractor ユーティリティ | Microsoft Learn
あとがき
PowerToysがリリースされた当初は、インターフェースが英語のみだったりと、使いづらいこともありましたが、バージョンアップを重ねて日本語にも対応し機能も充実し、使いやすさが格段に向上しています。
Windows 10や11をより便利に使いこなす上で、欠かせないツールとなりそうです。