Windows 11を展開・キッティングする4つの手法

Windows 11を展開・キッティングする4つの手法

Windows 10のサポート終了期限が迫る中、Windows 11PCの展開やキッティング方法を検討している企業や組織が多くなってきました。

そこでここでは、Windows 11を搭載しているPCを展開・キッティングするのに、どのような方法がありそれぞれにどのような特徴があるのかをわかりやすく解説します。

クローニング

Windows 11を展開・キッティングする4つの手法

クローニングは、基本となるPC(マスターPC)でWindowsの設定や更新プログラムの適用、デバイスドライバーのインストール、ソフトウェアのインストールといった必要な設定を行ったあとに、マスターPCのディスク内容をイメージ化し、そのイメージを他のPCのハードディスクに複製する展開手法で、同じハードウェア構成のPCを大量に展開したい場合に適した方法です。

マスターPCを作成する際は、Windowsに標準搭載されているシステム準備ツール(sysprep)を使って固有情報を初期化(一般化)し、ディスクイメージの取得や展開方法では、Microsoft提供のツール(Windows PE+DISMコマンド、Microsoft Deployment Toolkit(MDT)、Microsoft Endpoint Configuration Manager(MECM))を使う方法や、Acronisなどのサードパーティーのディスククローニングツールを使う方法が一般的です。

また、展開したPCの初期設定を自動化したいときは、無人応答ファイルや後述のプロビジョニングパッケージを使用するのが一般的です。

プロビジョニング

Windows 11を展開・キッティングする4つの手法

プロビジョニングは、プロビジョニングパッケージと呼ばれる設定の自動化機能を使ったキッティング手法で、Windows 10以降で利用でき、Windowsの広範囲の設定を自動化できます。

プロビジョニングパッケージは、Microsoftが提供している無料ツールWindows ADK(Windows Assessment and Deployment Kit)に含まれている「Windows構成デザイナー」で作成し、作成したプロビジョニングパッケージは、展開するWindowsマシン上で実行することで簡単に適用することができます。

「Windows構成デザイナー」は、Micrsoft Storeから単体のツールとしてダウンロードすることもできます。

Windowsの初期設定などを自動化したい場合、これまではシステム準備ツールの無人応答ファイルを使った方法が一般的でしたが、最新機能の設定は自動化できない場合があったり、応答ファイルの作成方法が分かりにくいといった点がありましたが、プロビジョニングパッケージなら最新のWindows機能の設定も自動化でき、プロビジョニングパッケージを作成するためのツール「Windows構成デザイナー」も使いやすいというメリットがあります。

なお、プロビジョニングパッケージにはWindows OSをインストールする機能はないので、展開はクローニングを使い、展開したPCの初期設定にプロビジョニングパッケージを使ったり、WindowsがプリインストールされたPCを、プロビジョニングパッケージを使って業務用途に合うよう設定したい場合に使用でき、比較的台数の少ないPCの展開・キッティングに適しています。

プロビジョニングパッケージでどのような設定が自動化できるかは、以下のMicrosoftのページが参考になるでしょう。

Windows Configuration Designer provisioning settings | Microsoft Learn

ベアメタルビルド

Windows 11を展開・キッティングする4つの手法

ベアメタルビルドは、Microsoftが提供している無料のMicrosoft Deployment Toolkit(MDT)や有償のMicrosoft Endpoint Configuration Manager(MECM)といったツールを使って、WindowsのインストールからWindowsの設定、アプリケーションのインストールまでを自動化する展開・キッティング手法です。

ベアメタルビルドは、ディスクイメージをキャプチャすることなく展開・キッティングが可能なため、ハードウェア構成の異なるPCへの大量展開にも対応できます。

なお、Microsoft Deployment Toolkit(MDT)やMicrosoft Endpoint Configuration Manager(MECM)を使いこなすには、ある程度の経験と知識が必要で、MECMを使う場合には、Windows ServerやActiveDirectoryドメイン環境も必要になることから、展開・キッティング手法として採用するハードルは高いでしょう。

ですが、Windowsマシンの集中管理にMECMやActiveDirectoryを利用しているなら、ハードウェア構成の異なるPCを効率よく大量にキッティングするのに最適な方法です。

Windows Autopilot

Windows 11を展開・キッティングする4つの手法

Windows AutopilotはMicrosoftが提供しているクラウドサービスで、インターネット接続環境さえあれば工場出荷状態のPCをどこででも自動的にキッティングすることができるサービスで、テレワークなどオフィス外の環境で業務を行う従業員が多い企業に適した方法です。

ただし、Windows Autopilotは、Microsoftが提供しているMicrosoft Entra ID、Microsoft Intune、Microsoft 365 Businessといったサービスと連携してセットアップを行う手法のため、これらのクラウドサービスを利用していることが前提条件となります。

また、Windows Autopilotを使いこなすには、Microsoft IntuneやMicrosoft Entra ID 、クラウドについての知識や経験が必要で、インターネットなどのネットワークを経由したキッティングのためネットワーク負荷が大きく、他のキッティング方法に比べてデバイスを利用できるようにするまでに時間がかかる可能性がある点に留意が必要です。

あとがき

個人的な印象ですが、多くの企業や組織では依然としてクライアントPCを展開・キッティングする際に、クローニングやクローニングと無人応答ファイル、プロビジョニングパッケージを組み合わせた方法を採用しているケースが多いと感じます。

ベアメタルビルドやWindows Autopilotが採用されるのは、キッティングの経験や知識が豊富なITソリューション企業が、エンタープライズクラスの大企業でのキッティングや展開を請け負う場合に限定されているように感じます。